捻挫
捻挫を鍼で治療するというのはあまり聞いたことがないかもしれません。炎症を起こしている患部に鍼を刺すことは、火に油を注ぐようなものだと私も思っていました。
一般的には捻挫した場合には整形外科を受診して、骨に異常がないことを診てもらい、患部を冷やすか湿布や痛み止めをもらって炎症を抑え、ひどければ患部を包帯やサポーターでしばらく固定しておくという方法が採られることが多いでしょう。その治療を否定する気は全くありません。病院の診断で折れていないことがわかるだけでも安心しますし、骨折に鍼をしても整復されるわけがないのです。
当院での捻挫の考え方はこうです。捻挫というのは関節に過剰な負荷がかかり内部の毛細血管から出血している状態です。実際、捻挫の数日後に腫れた患部が青色になったり紫色になったりして内出血している状態をだれでも一度くらいは経験済みでしょう。治ってくると黄色に変わったりもします。紅葉か。
捻挫の痛みは、関節内に血液が溜まり神経を圧迫している為に生じているのです。だから足の捻挫では歩くと体重で血液が圧迫されるために痛みが増すわけです。
鍼治療は、このうっ血した部分に刺鍼することで、関節周囲の血流をよくし、溜まった血液を血管に吸収させて、痛みを止め回復を早めるという方法を採ります。これは肉離れなどの治療にも当てはまる方法で、一回の治療で痛みはかなりなくなります。余談ですが、『さらば消毒とガーゼ』夏井睦著の主唱する「うるおい治療」などは、従来一般的に行われていた傷に対して消毒をしてガーゼを当てるという治療法を覆し、消毒をせず水洗いだけ行い、患部にワセリンを塗ってラップを巻いて潤った状態にしておく治療法ですが、捻挫をしたときには湿布を張って痛み止めを飲むのではなく、鍼をするってのが定番化するといいんですけどね。