当院は現役鍼灸師で中国医学翻訳家の北京堂代表である淺野周氏が考案した北京堂(淺野式)治療を行っている治療院です。北京堂(淺野式)治療法とは、鍼灸古典の『霊枢』『鍼灸甲乙経』『鍼灸大成』等に書かれた経験則に基づく治療を、解剖学によって裏付け、中国の最新の治療を取り入れつつ、痛み・症状の除去を目的に行っている非常に治療効果の高い治療法です。

 筋肉の緊張・硬縮(凝り)による神経・血管の圧迫が痛み・しびれの原因と考えられる疾患を対象としていますので、美容やリラグゼーションは行っておりません。長鍼を使用した深層筋への深刺によって、痛みの原因を根本から解消することが目的の治療院です。

特徴① ズシンとくる得気・響きを重視

当院は刺鍼によって患部に得気(とっき)や響きと呼ばれるズシンという重だるい痛みが出ることによって効果があると考えます。実際に鍼を打たれてみるとわかりますが、悪くなっている部分に刺鍼するとこの得気が起こります。悪くない部分に刺鍼しても何も起こりません。

 例えば首・肩の筋緊張が原因となっている頭痛を治療する場合、この得気は鍼を刺したことによって普段の頭痛が増幅・再現されるという形で具体化されます。鍼を刺すと筋肉は一時的に収縮しますので、凝り固まっていた首の筋肉に刺鍼するということは、筋肉による神経・血管の圧迫をさらに強めるということになります。つまり頭痛を再現させてしまうわけです。そして収縮した筋肉は刺鍼したまま時間を置くと今度は緩んでくるのですが、鍼治療とは、このような機序で筋肉を緩めて、筋肉内の神経・血管の圧迫を解いて痛みを取るというものです。逆に言うなら、鍼を刺して頭痛が再現されたということは、鍼が頭痛を発生させる原因となっている患部にうまく当たったことの「証拠」になるということです。得気があれば「効いた」ということになり、得気がなければ「効いていない」と言っても良いでしょう。

 鍼治療が初めての方や当院の治療がきついと感じられた方には、本数を必要最小限に減らす、鍼の太さを変える、などで負担を減らしますが、その場合にも患部に当たれば得気は起こります。ですからそれが苦手であるとか、「痛くないやさしい鍼」や「リラグゼーション的な鍼」を御希望の方には向かないでしょう。ハーブの香りも漂ってきませんし、癒しの音楽も聞こえてきません。ただ人によって感じ方は全く異なりますので、心地良さを感じる方ももちろんいらっしゃいます。「あ~スッキリした」とか「いや~効いたぜ」みたいな。

 症状が慢性化している場合は、障害部位が深層にある場合がほとんどですので、皮膚や表層の筋のみへの刺鍼で効果をあまり感じられなかったような方は、得気のある響く鍼の効果を実感して頂けると思います。

 尚、切皮(せっぴ)という刺鍼の最初の段階でのチクチクした痛みは、術者の巧拙の問題であったり、痛点の密集しているところに当たったりしたという事で、回避できますので、そのような場合は遠慮なくお申し付けください。

特徴② 長鍼を使用して深層筋へアプローチ

 筋肉が浅いところから深いところまで層状になっている場合、障害が起きていると考えられる筋肉に対しては、浅い部分だけでなく深い部分にも刺鍼が必要です。腸腰筋(大腰筋・腸骨筋)や小殿筋、肩甲下筋のような深層の筋肉に刺鍼を行うためには、一般的な治療で使われている短い鍼ではなく、長い鍼を使う必要があります。また長い鍼を使用するには、刺鍼箇所の下にはどんな組織があるのかという知識と技術が必要になります。闇雲に深く刺しているわけではありません。深く刺せる場所だから、深く刺しているのです。肩甲間部のような薄い筋肉で、下に肺があって危険な箇所には始めから刺鍼しておりません。

 一般的には深く刺すより浅く刺す方が安全なイメージがありますが、どこまで刺せるかを解剖学的にわかっていて深く刺す方が、わからずにアバウトに浅く刺しているより安全だと思われますが、いかがでしょうか。患者さんに、「効いてないからもっと深く刺して」と言われたら、あとどの位刺せるのかどうやって判断するんでしょうか。あと3mmなら大丈夫だったけど5mmはどうかな?って、ヤバくね、それ。当院は骨にまで達する刺法で、それ以上は鍼が進めない為、深く入り込んでいつの間にか危険な箇所に達してしまうようなことは起こりませんので、ご安心ください。

 と言っても鍼の経験のない方にとってはドン引きかもしれません。でも何らかの治療に通っている方で、あの深層筋に鍼を打てばもう少し経過が良くなるんじゃないかと思うことが頻繁にあります。痛くないけどあまり効かず、それなりの費用がかかる治療を延々と受け続けるのってどうなのかしらん。これは当院にもブーメランとして帰ってくる話ですが、深層筋への施術を3回程度行ってみて、効果を実感できるかどうかが継続する際の一つの目安になるでしょう。

特徴③ 本数を多く打つ

 筋肉の大きさ、長さ、形状は様々です。当院では対象となる筋肉をまんべんなく打っていく治療法を採っています。対象筋肉内の特に凝り固まったしこりのような部分は血流が特に悪くなっているはずですから、もちろん狙います。まんべんなく打つのは、その周囲の血流もよくし、特に悪くなっている部分へたくさん新鮮な血液が流れるようにする為です。深層筋の悪化した部分は触知できませんから、打ちながら探すという狙いもあります。本数は20~30分の施術時間で、30~90本、平均では60~70本です。

特徴④ 置鍼(ちしん)時間を長く取る

 また鍼をしてしばらくそのまま置いておきます(置鍼)が、その時間が他の治療院と比べて長いかもしれません。前述の通り、鍼を刺入すると筋肉が収縮しますが、しばらくそのまま置いておくと弛緩し始めます。そして再びこの収縮と弛緩が交互に繰り返されますが、そうすることによって段々と筋肉を緩めて血管・神経の圧迫を解いて、血流の回復・痛みの除去を図っていくというわけです。ある程度筋肉が緩んでくるまでに大体15~20分かかりますが、当院では20~35分の置鍼時間を設け、刺鍼による収縮と弛緩の作用を最大限に利用します。患部に刺鍼してすぐに抜いてしまっても効果はありますが、筋を緩める効果は弱いであろうという判断です。

特徴⑤ 施術後数日間は重だるい

 数日間重怠さが出ることをも含めて①で述べた得気や響きと言ってもいいのですが、ここでは分けて説明します。悪くない筋肉に刺鍼しても何も起こらないことは前述しましたが、このことは逆にいうと悪くなっている筋肉に刺鍼すると何かが起こるということになります。鍼に慣れていない方だと、施術後に悪化したのかなと思ってしまうような変化です。

 凝り固まった筋肉の締め付けによる痛みが生じている場合、筋肉内の血流はかなり悪くなっています。瘢痕化してしまっている箇所などは、血流はほぼない状態です。そこに鍼を刺すことによって血流を回復させると、運動後の筋肉痛のような重だるい感覚が出てきます。このような感覚は、同じ痛みでも筋肉内の血流が回復された結果出てくるもので、凝り固まった筋肉へ刺鍼すると必ず出てくるものです。「鍼ごわり」や「瞑眩(めんげん)反応」と言われます。凝り固まった筋肉内は、疲労物質や、痛みを出す物質が代謝されずに滞っています。それが刺鍼によって血流が回復されると、それらが解放されます。施術後に、刺鍼部位だけでなく身体全体が重だるくなることがあるのは、血流の回復によってこれらの物質が身体全体を駆け巡るからです。この状態が数日続きますが、その間は身体の内部で改善していくための変化が起こっているとお考え下さい。数日経つとこなれて落ち着いてきます。鍼が人の生来持っている自然治癒力を引き出すというのはこのことで、施術者はそのきっかけを作ったに過ぎません。
 尚、施術後に水分を多く採って頂くのは、この疲労物質などの老廃物を尿として体外に排出することを促がすためです。

 問題になるのは、硬い筋肉による神経の圧迫が強すぎて、痛みの信号が脳に送られなくなっている、つまり悪化しすぎて痛みを感じなくなっている場合です。その状態の筋に鍼をすると、「鍼ごわり」が強く出て一時的に痛みが出たり、まれにしびれたりする場合があります。その箇所は記憶から消えていたとしても、かつて必ず痛みを感じていた箇所のはずです。痛みを感じなくなっていた箇所が刺鍼後痛くなってしまったことになりますから、鍼治療に慣れていない方は悪化したと心配になるかもしれません。慣れている方でも最近は浅く痛みを生じない鍼を打っているところが多いのでこの状態を経験されていないのかもしれません。しかし、これは先述のように治療の過程で出てくる「正常な」反応で、刺鍼事故によって生じた痛みの感覚とは明らかに違うものです。刺鍼後この「鍼ごわり」が強く出て不快な場合は、早めに来院して頂いて取り切れていない硬い筋の圧迫を解く必要があります。改善するに従ってこの「鍼ごわり」は無くなっていきます。

 鍼というのは、このように痛かった状態から痛みがなくなって重症化していった場合、痛みがなくなっている状態から痛みを感じる状態に戻し、さらに痛みがなかった元の状態へもっていくというように、重症化した過程を逆に辿って改善させていく治療法なのだと言ってもいいでしょう。